伊勢湾とはどんな海なの?

 1950年代頃までの伊勢湾は、多様な魚介類が湧くように棲息する「豊穣(ほうじょう)の海」でした。現在よりも簡易な漁具や漁船を用いても、有り余る海産物を人々に届けることが出来る、恵みの海でした。

 ところが、1960年代頃から日本の経済高度成長が始まり、伊勢湾でも水質の急激な悪化が起き、1980年頃に汚濁はピークに達しました。その後、国の水質総量規制により、陸からの汚濁負荷の削減が行われ、赤潮の発生回数と海域の栄養塩濃度は低下し、透明度も回復してきましたが、夏季の貧酸素水塊(ひんさんそすいかい)の発生状況は変わらず、むしろ発生日数の長期化傾向も観察されています。

 貧酸素水塊とは、海水中の溶存酸素濃度が3mg/Lを下回るようになった水塊のことで、この状態になると、低酸素に強いゴカイなどの一部の生物を除き、棲息が困難になります。伊勢湾では毎年5月から10月にかけて、海底付近で貧酸素水塊が大規模に発生します。

 この貧酸素水塊の長期的な発生の影響が大きいと考えられていますが、伊勢湾の底生性魚介類の漁獲量は大きく減少し、海域全体の生物多様性も低下し、現在の伊勢湾は「豊穣の海」とは対極の「貧相な海」の状態におちいり、抜け出せずにいます。



 これに加えて、最近は海洋ゴミの問題が発生しています。伊勢湾の海洋ゴミの特徴はその8~9割が自然ゴミ(流木と灌木)で、河川で大出水が起きると、大量の自然ゴミが伊勢湾に流れ込み、船舶の安全航行を脅かし、漁業に大きな被害を与え、海岸に漂着して海岸生物の生息環境を奪い、また景観を破壊しています。

 伊勢湾の海洋ゴミは近年になり増加してきたと考えられており、伊勢湾に流れ込む河川の河川敷の管理不足と林地化、河川周辺の山林の管理不足、局地的な豪雨の増加などが原因と推定されています。

 自然ゴミに比べて量的には少ないものの、プラスチックゴミも大きな問題です。伊勢湾の海岸には、PETボトル、使い捨てライター、食品包装、電化製品・生活器具、容器コンテナ、発泡スチロールの箱や漁具などのプラスチック製品があちこちで見られます。

 最近、世界的な話題となっているマイクロプラスチックも伊勢湾の海岸に広がっています。マイクロプラスチックとはサイズが5mm以下のプラスチックのことで、上記のプラスチックが海岸で砕けたものに加えて、農業や工業で使用している小さなプラスチック材も大きな割合を占めています。

 徐放性肥料プラスチックは、農業用の肥料の周りにコーティングされたプラスチックで、肥料をゆっくりと効かせる目的で使われています。速やかに生分解性するとして販売されていますが、伊勢湾の海岸に大量に漂着している状況です。

 レジンペレットは錠剤のような形のプラスチックの小片で、プラスチック製品に成型される前の原料として主に使われていますが、その他の特殊な用途もあるようです。どこから環境中に漏れ出たものか、良く分かっていません。

 伊勢湾を守るためには、今の環境状態を知ることが大切です。そのために、いろいろな伊勢湾に関する教育研究活動を行い、その結果を積極的に情報発信してゆきたいと考えています。